攻撃者は、なぜ自分の証拠を公開したのか ― お名前.com デスクトップクラウド事件を一次資料で追う

2026年10月のGMO「お名前.com デスクトップクラウド」不正アクセス。攻撃者とみられるサイトの保存版と、公開された source.zip を一次資料として読み直します。1,260件の口座、3,555件のアクセスログ、数字の出どころまで。

公開 検証済み 2026-10-26・隔離した仮想環境(REMnux / FlareVM / DefenderVM、外部と遮断)

目次
  1. はじめに
  2. 何が起きたか
  3. 攻撃者サイトの内容と構成
  4. インフラ:WHOIS・TLS・サブドメイン
  5. サイト内のコメントと言語分析
  6. サイトの版とビーコン
  7. 公開された source.zip
  8. 中身①:ビーコンは何を記録していたか
  9. 中身②:口座一覧は 1,260 件
  10. 破壊を主張する口座の内訳
  11. メール画像とメタデータ
  12. 数字:4,352 と 77 億
  13. 利用者の PC と .rdp
  14. 制度:要請と発動は別
  15. 未確認のこと
  16. 考察メモ
  17. IoC
  18. まとめ
  19. 今すぐやること
  20. 出典
検証の範囲生きた攻撃者サイトへは 1 回も接続していません。使ったのは Wayback の保存版、RDAP、証明書の透明性ログ、そして攻撃者が公開した source.zip です。被害者の IP・メール・口座・本文は一度も画面に出していません。

2026 年 10 月 19 日、GMO インターネットグループの「お名前.com デスクトップクラウド」で調査が始まりました。FX の自動売買に使われていた、クラウド上の Windows です。利用者の取引口座で、身に覚えのない取引が起きました。

この事件には、ふつうの漏えい事件と違う点があります。攻撃者とみられる者が、自分のサイトで「証拠」を公開したことです。ビーコンのソースコード、口座一覧の Excel、アクセスログ、メールのスクリーンショット。こちらから盗んだのではなく、相手が自分で出した。だから追える。

この記事は、その公開物を一次資料として読み直した記録です。前半でインフラを追い、後半で中身を検証します。数字は公式・主張・本調査で確認・未確認の 4 つに分けます。

何が起きたか

ここは GMO の公式発表だけで組み立てます。時刻は日本時間です。

日付 出来事
10/19 利用者からの問い合わせで調査開始
10/20 一部のサーバーで、第三者の不正なプログラムの設置を確認。新規申し込みとコントロールパネルを停止
10/21 04:00 全プランのサーバーを順次停止
10/22 警察に相談。取引口座のログイン情報が取られ、不正に使われた可能性を公表
10/24 情報が外部に持ち出されたことを確認した、と発表。見舞金と補償を公表し、能動的サイバー防御の適用を政府に要請
10/25 代表ブログで、制度上の位置づけと対応を説明
10/26 代表ブログに追記。要求額は 5,000 万ドル(約 80 億円)、要求文書は 10/21 11:57

GMO は、攻撃者とみられる者から金銭を要求されたことを認めています。金額は 10 月 26 日の代表ブログの追記で、5,000 万ドル(約 80 億円)と公表されました。期限は公表していません。応じない方針も明言しています。見舞金は現在の利用者全員に一律 5,000 円、不正取引で生じた実現損失は補償、代替サービスへ乗り換えた場合は 6 か月無償。ここまでが公式です。

攻撃者サイトの内容と構成

サイトの題名は「通告 — onamae.com desktop cloud」。トップのほかに、下位ページが 4 つありました。どれも保存版で読んだもので、生きたサイトには接続していません。

ページ 内容 こちらの読み取り
トップ(index / index.php) 犯行声明、数字、交渉の要求 版ごとに数字と文面が変わる。1×1 ビーコン入り
timeline.php 交渉の時系列 10/21 11:55 に URL 送付、17:00 に「最終警告、破壊開始」
emails.php メール画像 25 枚 HTML コメントに「通告 3 通」「進捗更新 22 通」
plan.php 今後の予定 「残り 85%」と「残る 83%」が同じページに混在
accounts.html 口座一覧の表示 JS を 2 本読み、外部 CDN から [email protected] を取る

構成そのものは、「声明・時系列・証拠・予定・一覧」を 1 枚ずつ見せる形です。交渉を有利に進めるための資料室に近い。ただし、数字はページをまたぐと合いません(後述)。

更新 2026-10-29この節は、記事を公開した 10/26 時点で保存版から読んだ記録です。GMO は第 13 報で、攻撃者側のサイト(ミラーを含む)のドメインが 10/28 午前 4 時頃に停止されたことを確認した、と発表しました。

インフラ:WHOIS・TLS・サブドメイン

見るのは公開メタデータだけです。サイトには触れません。ドメインと IP は、この記事では伏せます(誘導と誤接続を避けるため)。

項目 値 区分
レジストラ Namecheap, Inc. RDAP で確認
登録日時 2026-08-31 15:26 UTC(= 9/1 00:26 JST) RDAP で確認
有効期限 2027-08-31 15:26 UTC RDAP で確認
登録者 redacted(非公開) RDAP で確認
ネームサーバー dns1/dns2.namecheaphosting.com RDAP・公開 DNS
証明書 SSL.com。SAN は当該ドメインと www のみ crt.sh で確認
証明書の発行 登録の 17 分後(15:43 UTC) crt.sh で確認
ホスティング Namecheap の共用サーバー(LiteSpeed・米国) urlscan の既存観測
同居サイト 逆引きで 500 件以上(API の上限) 第三者 DB
MX mx1/2/3-hosting.jellyfish.systems 公開 DNS

証明書の SAN が当該ドメインと www だけなので、同じ証明書から別サイトは出てきません。サブドメインも www 以外は確認できていません。IP は共用サーバーのもので、攻撃者のものではありません。ここから人は出ません。

登録の 17 分後に証明書。立ち上げを急いだ形跡としては整合的ですが、それ以上のことは言えません。登録者は非公開で、国籍や所在の根拠にはなりません。

サイト内のコメントと言語分析

保存版の HTML と CSS には、画面に出していないコメントが残っていました。ここは、サイトの作り手の手触りが出る部分です。

場所 残っていた文言
トップの HTML コメント(v4) 「顧客アカウントの 17% を破壊済み」「24 時間で約 77 億円相当」「破壊は現在も進行中」「GMO からの実質的な返答:公表の 10 分前に一度だけ」
plan.php の HTML コメント 「現在のペースで 24 時間あたり 15%。残りは 7 日分ある。」
emails.php の HTML コメント 「通告:3 通」「進捗更新:22 通」
CSS のコメント 「電話履歴」「合計列の選択」「複数テーブル」「目次」「更新タイムライン」

CSS のコメントは流暢な日本語で、ところどころに accounts panel・header・layout のような英語が混ざります。一方、本文には「約 74 億万円」「各アドレスにずつ」「返答えなかった」(いずれも原文ママ)のような崩れがあります。

ここから言えるのは、コードのコメントと本文で、書いた工程が違うことまでです。「日本語が流暢だから日本人」「機械翻訳だから中国人」は言えません。言語は国籍の証拠になりません。

サイトの版とビーコン

保存版を並べると、6 つの版がありました。版ごとに、数字とビーコンの有無が変わっています。

版 見えている数字 ビーコン
v1 10/23 02:28 15% / 約 66 億円 / 約 2 万 7 千台 あり
v2 10/23 15:32 17% / 約 77 億円 あり
v3 10/24 12:36 17% / 約 77 億円 あり
v4 10/24 20:26 数字が画面から消え、HTML コメントに残る あり
v5 10/25 12:28 100 万ドル なし
v6 10/26 06:32 100 万ドル(v5 と同じ内容) なし

15% が 17% に、66 億が 77 億に変わり、途中で数字が画面から消えてコメントに移り、最後にビーコンが外れています。ビーコンは実在した。そして、外された。 ここは版の実物で確認できました。

なお、v5・v6 の「100 万ドル」は、GMO が公表した要求額(5,000 万ドル)と桁が違います。どちらが何の額かは、サイトの文面だけでは決まりません。

更新 2026-10-29GMO は 10/27 の第 12 報で「GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金」を設け、報奨金の上限を総額 100 万米ドルとしました。これは情報提供者への報奨金で、上のサイトの「100 万ドル」とは別のものです。

公開された source.zip

サイトのトップには、source.zip が置かれていました。1,354,131 バイト、48 エントリです。

source.zip の一覧。track.php、data/accounts.xlsx、visits.log、visits.json、accounts-2.xlsx などが入っている。
図1:source.zip の中身。ビーコンの実装、口座一覧、アクセスログ、メール画像 25 枚が入っています。

再取得したファイルの SHA-256 は、2026 年 10 月 26 日の記録と一致しました。同じ物です。ここから先は、この中のコードとデータを読みます。

3つのファイルの SHA-256 が 2026-10-26 の記録と一致していることを示す端末画面。
図2:source.zip・accounts.xlsx・accounts-2.xlsx の SHA-256 が記録と一致(MATCH)。

中身①:ビーコンは何を記録していたか

track.php は、1×1 の画像を返すふりをして、時刻・IP・IP のハッシュ・bot 判定・ページ名・User-Agent・Referer を記録します。ここで 2 つ、見過ごせない点がありました。

ソルトが既定値のまま

track.php の IP_SALT が change-this-salt-please という既定値のままであることを示す端末画面。
図3:IP_SALT = 'change-this-salt-please'。既定の文字列のまま、変えていません。

ハッシュは SHA-256 の先頭 16 桁で、ソルトが既知です。総当たりで元の IP に戻せます。「ハッシュ化したから安全」ではありません。

IP はヘッダで偽装できる

client_ip() は CF-Connecting-IP、X-Forwarded-For、X-Real-IP、REMOTE_ADDR の順に信頼します。つまり、ヘッダを付ければ記録される IP を変えられます。

visits.json の集計。総リクエスト 3,555、人間 3,541、bot 14、ユニーク IP ハッシュ 1,379。
図4:訪問ログの集計。3,555 リクエスト、人間 3,541、bot 14、ユニーク IP ハッシュ 1,379。

1,379 は「1,379 人が見た」という意味ではありません。 IP は共有されるし、偽装もできる。ユニークなハッシュの数です。それ以上は言えません。

それでも、20 時間ほどで 3,555 回。ビーコンはトップページにしかなく、ページはほぼ全部 index でした。攻撃者が、自分の訪問ログを公開してしまった格好です。

中身②:口座一覧は 1,260 件

accounts.xlsx のメタデータは、次のとおりでした。セルの値は読んでいません。

accounts.xlsx のメタデータ。Application は WPS Sheets、HeadingPairs は工作表、Rows は 790。
図5:作成アプリは WPS Sheets、見出しは簡体字の工作表、行数は 790。

accounts-2.xlsx は 472 行・1,888 セル。2 つを足して、ヘッダー 2 行を引くと 1,260 件です。

accounts-2.xlsx のメタデータ。Rows は 472、Cells は 1888。
図6:accounts-2.xlsx は 472 行。790 + 472 − 2 = 1,260。

WPS Sheets と「工作表」は、中国製のオフィスソフトで作られたことの証拠です。ただし国籍は言えません。環境の証拠と、人の国籍は別です。

破壊を主張する口座の内訳

攻撃者は「14 万口座の 17% を破壊した」と主張しています。その内訳を、サイトに書かれた数字だけで整理します。これは主張であって、こちらの確認ではありません。

主張 そのまま計算すると 突き合わせ
口座数 約 14 万(リアル 9 万以上・デモ 5 万以上) — GMO は口座数を公表していない
破壊済み 17% 14 万 × 17% = 約 23,800 公開一覧は 1,260 件(0.90%)
残り 83% 約 116,200 —
24 時間で 15% 約 21,000 口座/日 83% を 15%/日で割ると約 5.5 日。サイトは「残り 7 日分」
24 時間で約 77 億円 1,260 件なら 1 口座あたり約 611 万円 23,800 口座なら約 32 万円。どちらが正かは不明
残高 2.8 億ドル × 17% = 約 4,760 万ドル 約 75 億円。割合からの逆算

証券会社別の内訳は出せません。 口座一覧のセルの値は読んでいないからです(PII)。分かるのは、攻撃者が主張した割合と、公開一覧の行数までです。ここを混ぜると、「23,800 人分の内訳」を確認したように読めてしまいます。

メール画像とメタデータ

emails.php には、Gmail のスクリーンショットが 25 枚ありました。.eml や .msg はなく、SMTP ヘッダーは解析できません。

発信元のメールアドレスは取得していません。 画像上部のヘッダー表示から OCR したのは日時だけで、宛先・差出人・本文は読んでいません。被害者や第三者のアドレスが写っている可能性があるためです。したがって、この記事でも出しません。

分かるのは、HTML コメントの「通告 3 通」「進捗更新 22 通」= 25 枚という構成と、表示された時刻です。mail-01 は Oct 21 2:55 AM、mail-02 は 5:07 AM でした。

Gmail は見る人の設定したタイムゾーンで時刻を出すので、日本時間で何時かは画像だけでは決まりません。UTC と読めば 11:55 と 14:07 で、timeline.php の「11:55 に URL 送付」や、GMO が公表した要求文書の時刻(11:57)と近くなります。米国中部の夏時間(UTC−5)と読めば 16:55 と 19:07 で、mail-01 の本文「本日 17:00 から」と合います。どちらとも決めません。元のヘッダーがないからです。くわしくは ②の記事にまとめました。タイムゾーンは設定で変えられるので、どちらでも居場所の証拠にはなりません。

メタデータは、xlsx が WPS Sheets・工作表・Logitech・790 行/3,160 セル(2 つ目は 472 行/1,888 セル)。メール画像は RGBA 8bit で、ソフト名や DPI の情報は入っていませんでした。

数字:4,352 と 77 億

数字が独り歩きしやすい事件でした。最初に整理します。

数字 何の数 区分
26,739 対象になり得るサーバー数(第 3 報の注記) 公式
1,260 口座一覧の行数 本調査で確認
4,352 samples.zip のログに記録されたコピーの数(10 台分) 本調査で確認
3,555 / 1,379 ビーコンのアクセス数 / ユニーク IP ハッシュ 本調査で確認
約 77 億円 攻撃者が主張する被害額 主張

26,739 はサーバーの数で、被害者の数ではありません。公開された一覧(1,260 件)の 20 倍以上の数ですが、実際の被害者数は公表されていません。GMO 自身が「不正アクセスや情報取得が確認された件数ではない」と注記しているので、ここは公式に従います。

攻撃者は「24 時間で約 77 億円」と言っています。ところが、同じサイトの中に 42 億円という数字もあります。合いません。公開された一覧の残高は、こちらではセルの値を読んでいないので、足し合わせていません。

なぜか。攻撃者が主張する全体の残高は 2.8 億ドル。その 17 パーセントを計算すると約 4,760 万ドル、当時のレートで約 75 億円。割合から逆算した数字で、実際の口座の合計ではありません。「77 億は嘘だ」と言い切るのではなく、サイトの中の数字どうしが合わない、というだけです。

利用者の PC と .rdp

サイトには、もう 1 つ公開物がありました。利用者の PC を読んだ作業ログ 10 台分の samples.zip です。その集計と、RDP のドライブ共有・DPAPI のラボ実測は ②の記事に分けました。攻撃者が「GMO の過失」の証拠として見せた .rdp の読み方と、利用者がやることは ③の記事にあります。

制度:要請と発動は別

GMO は 10 月 24 日の第 4 報で、能動的サイバー防御の適用を政府に要請(具申)したと発表しました。翌 25 日の代表ブログでは、世間で指摘されている 2 点を、理解したうえでの具申だと説明しています。特定社会基盤事業者に該当しないこと、そして民間企業から言われて動くものではなく、政府が主体的に決めるものであることです。内閣府の一覧は 2026 年 7 月時点で 15 分野・258 社。GMO は入っていません。

つまり「要請したのだから政府が動くはずだ」「動かなかったのはおかしい」という話は、制度の前提が違います。要請と発動は別です。政府が実際にどのような措置をとったかは、未確認です。

更新 2026-10-29朝日新聞と時事通信は 10/29、総務省が攻撃者のものとみられるサイトへの接続を遮断(ブロッキング)するよう、業界団体を通じて通信事業者に要請していたと報じました。総務省の公式の文書は確認できていません。能動的サイバー防御が発動されたかどうかも、確認できていません。

未確認のこと

  • 配布された .rdp に drivestoredirect:s:* が既定で入っていた、という主張。攻撃者の主張で、GMO の発表は触れていません。こちらでも確認できていません
  • drivestoredirect が 2 行あるとき、Windows 標準の接続ソフトがどちらを使うか。FreeRDP は後の行を使います(③の記事)
  • 侵入経路。攻撃者は自分のサイトで「VPS 群が Active Directory の 1 つの環境でつながっていて、ある VPS から別の VPS へ移れた」と主張しています。さらに、全 VPS に共通の管理者権限のアカウントがあり、サポート担当者が利用者の PC に接続したとき、利用者側がその認証情報を取り出せる状態だった、とも主張しています(10/24 の投稿)。どちらも攻撃者の主張で、GMO は触れておらず、こちらでも確認できていません。GMO は侵入経路を調査中とし、原因を公表していません(第 6 報まで)
  • 攻撃者の所在。タイムゾーンも言語も、国籍の証拠にはなりません
  • 政府の実際の措置
更新 2026-10-29第 16 報(10/29 20:50 時点)でも、GMO は侵入経路と原因を公表していません。調査結果が公表される保証はなく、攻撃者の主張は確かめられないまま残るかもしれません(続報)。配布された .rdp の件にも触れていません。政府の措置は、総務省がブロッキングを要請したと報じられています(朝日新聞・時事通信、10/29)が、公式の文書は確認できていません。

考察メモ

ここからは、事実ではなくこちらの読みです。断定はしません。

なぜ、自分で証拠を出したのか。 交渉を有利にするためだと考えるのが自然です。口座一覧とメールを見せれば「本当に持っている」と信じさせられる。実際、要求額と期限を後から足しています。ただし、動機は分かりません。金銭目的と決めつけるのも早い。

数字が合わない理由。 同じサイトの中で 77 億・74 億・66 億・42 億が混在し、「残り 85%」と「残る 83%」が同じページにあります。誇張、複数ツールの混在、機械翻訳。どれもあり得ます。ただ、内部で矛盾する数字は、事実として扱えません。これは相手に不利な事実です。

「破壊」という言葉。 データを消したのか、口座を乗っ取って不正取引をしたのか。サイトの言葉だけでは決まりません。GMO の第 4 報は、脅迫の内容を「不正な注文による口座残高の毀損」と書いています。データの消去ではなく、不正な取引で残高を減らす、という意味に読むのが公式と整合的です。ここを混ぜると、被害の性質を間違えます。

インフラは、稚拙です。 共用ホスティング、既定のソルト、登録 17 分後の証明書、非公開の Whois。隠す気はあるが、作りは粗い。それでも被害が大きいのは、入口が弱いからです。RDP のドライブ共有、パスワードの使い回し、多要素認証の未設定。攻撃者の腕ではなく、こちらの設定で負けています。

言語分析は、国籍の話ではありません。 コメントは流暢な日本語で、本文は機械翻訳調。工程が違う、までが言えることです。ここを国籍に結びつけると、事件と関係のない人を傷つけます。

私たちにできるのは、ここまでです。 個人の特定には、プロバイダのログと捜査が必要です。公開情報でできるのは「ここまで分かる/ここから先は分からない」の線を引くこと。この線を引かない記事が、いちばん危ない。

IoC

再現と照合のための値です。ドメインと IP は掲載しません(誘導と誤接続を避けるため)。

種別 値 補足
配布物 source.zip / SHA-256 404c0ddd93ef31d4fbb8500303e9579b28009b92442e6666b08ba334d0aa4e99 1,354,131 バイト・48 エントリ
口座一覧 accounts.xlsx / 5eed15392073979806767807dc65c2ec0454f992b40bcef30db6cddd0e65b82c 36,749 バイト
口座一覧 2 accounts-2.xlsx / 29f9663fed75cea504c67eda4103e75f46651c385f850000653d13a4861120da 26,059 バイト
サンプル samples.zip / 8f1b1174270b79e3faedac1f44626360006a753bbcdde850deea150093eada58 235,002 バイト(再取得はしていない)
ファイル名 track.php / data/logs/visits.log / data/logs/visits.json / data/mail-01.png〜mail-25.png zip 内の構成
ビーコン /track.php?p=index 1×1・opacity:0・pointer-events:none
既定のソルト change-this-salt-please 変更されていない
ページ題名 通告 — onamae.com desktop cloud トップ
登録系 Namecheap / dns1/dns2.namecheaphosting.com / SSL.com Whois は非公開

まとめ

今回の事件は、「まとめを信じるか疑うか」の話ではありませんでした。公開された証拠を、一次資料まで降りて読み直すと、数字の意味が変わります。

  1. 26,739 は被害者数ではない。対象になり得るサーバー数
  2. 1,260 件の口座一覧、4,352 のコピー(②)、3,555 のアクセス。それぞれ別の数
  3. 77 億円は割合からの逆算。サイトの中の数字と合わない。ただし不正取引が起きたことは、GMO が公式に認めている
  4. RDP の共有は、切る。読み取りも書き込みもできる(②でラボ実測)

今すぐやること

手順は ③の記事にまとめました。要点だけ書きます。

  1. 取引口座と取引ツールのパスワードを、FX 取引に使っていない端末から変え、2 段階認証を有効にする
  2. 手元の .rdp はダブルクリックしない。メモ帳で drivestoredirect の行をすべて確かめる
  3. 攻撃者を名乗るメールは開かず、返信せず、払わず、ファイルを送らない
掲載しない URL保存版(Wayback)・RDAP・証明書透明性ログは、攻撃者サイトへの誘導と誤接続を防ぐため、対象ドメインを含む URL は掲載しません。

出典

  1. GMO インターネットグループ 第 1 報(お名前.com)www.onamae.com/news/article/11584
  2. 同 第 2 報group.gmo/info/alert/20261022/
  3. 同 第 3 報group.gmo/info/alert/20261023/
  4. 同 第 4 報group.gmo/info/alert/20261024/
  5. 同 第 5 報group.gmo/info/alert/2026102402/
  6. 同 第 6 報(2026-10-26 21:00 時点)group.gmo/info/alert/20261026/
  7. 代表ブログ(2026-10-25、10-26 追記)www.kumagai.com/?eid=19600
  8. 内閣府 特定社会基盤事業者一覧(2026 年 7 月時点)www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/infra/doc/infra_jigyousya.pdf

確認日 2026-10-26