.rdp ファイルの読み方と、利用者がやること ― お名前.com デスクトップクラウド事件

.rdp の drivestoredirect が 2 行あるとき、どちらが効くのか。Microsoft の仕様と FreeRDP のソースで確かめ、自分のファイルを接続せずに点検する方法と、利用者がやることをまとめます。

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目次
  1. はじめに
  2. .rdp はテキストの設定ファイル
  3. 攻撃者が見せたファイルの中身
  4. 同じ行が 2 つあると、どちらが効くか
  5. 自分の .rdp を、接続せずに点検する
  6. 書き換えるなら
  7. デスクトップクラウドにつないでいた人がやること
  8. 攻撃者を名乗る連絡が来たら
  9. 分からないこと
  10. まとめ
  11. 出典
3 本の記事

この事件は 3 本に分けています。① 攻撃者サイトと公開物の検証、② 利用者 PC から何が読まれたか、③ この記事(.rdp の読み方と、利用者がやること)。

続報:GMO 第 7〜9 報(10/27 正午の予告まで)

続報:GMO 第 10〜16 報(10/29 夜まで)

お名前.com デスクトップクラウドは、FX の自動売買に使われていた、クラウド上の Windows です。利用者は、自分の PC からリモートデスクトップ(RDP)で接続します。そのとき使うのが .rdp ファイルです。

攻撃者とみられる者は 2026 年 10 月 24 日、自分のサイトに .rdp をメモ帳で開いた画像を載せ、「GMO が配布したファイルでドライブの共有が最初から有効だった。だから利用者の PC に入れた」と主張しました。GMO の発表は、この点に触れていません(第 6 報まで)。画像が配布物そのものかどうかも確かめられていません。

更新 2026-10-29第 16 報(10/29 20:50 時点)でも、GMO の発表はこの点に触れていません。

それでも、.rdp の読み方を知っておく意味はあります。ドライブを共有したまま接続すると、接続先から自分の PC のファイルを読まれ、書き込まれることは、ラボで確かめました(②の記事)。

.rdp はテキストの設定ファイル

.rdp は、接続先と接続のしかたを書いたテキストファイルです。1 行に 1 つ、名前:型:値 の形で書きます。型は、s が文字列、i が数値です。

この事件にかかわる行は、次の 4 種類です。値の意味と既定値は、Microsoft の一覧によります。

行 意味 既定値
drivestoredirect:s:(値が空) 手元のドライブは接続先に見せない 空(見せない)
drivestoredirect:s:* 手元のドライブを全部、接続先に見せる。接続中に挿した USB メモリなども対象 —
redirectclipboard:i:1 手元でコピーした内容を、接続先でも貼り付けられるようにする 0(使わせない)
redirectprinters:i:1 手元のプリンターを、接続先から使えるようにする 0(使わせない)
authentication level:i:0 接続先が本物か確かめられなくても、黙ってつなぐ 3(指定なし)

drivestoredirect が共有するのは、PC に固定されたドライブ、USB などの取り外せるドライブ、そしてネットワークドライブです。会社の共有フォルダーをドライブとして割り当てていれば、それも接続先から見えます。

攻撃者が見せたファイルの中身

攻撃者サイトの画像を保存し、写っている行を 1 行ずつ数えました。画像は winposstr の行から始まり、drivestoredirect:s:* の行で終わる 35 行です。接続先とユーザー名は黒く塗られています。上の 4 種類が出てくる位置を書き出すと、次のようになります。

画像の何行目か 値 既定値と比べると
15 redirectprinters:i:1 既定の 0 から変えてある。手元のプリンターを渡す
18 redirectclipboard:i:1 既定の 0 から変えてある。手元のコピー内容を渡す
20 drivestoredirect:s: 既定のまま。ドライブは渡さない
23 authentication level:i:0 既定の 3 から変えてある。接続先を確かめられなくても黙ってつなぐ
35 drivestoredirect:s:* ドライブを全部渡す。画像の中で、赤い四角で囲まれているのはこの行だけ

つまり、1 つのファイルの中で、ドライブについての指定が食い違っています。20 行目は「渡さない」、最後の 35 行目は「全部渡す」です。

同じ行が 2 つあると、どちらが効くか

Microsoft の資料には、同じ名前の行が 2 回あるときの扱いが書かれていません。ソフトによって違う可能性があります。

ソフト 2 行あるとき 根拠
FreeRDP(3.32.2) 後の行で上書きする。この画像なら「全部共有する」 ソース client/common/file.c の freerdp_client_rdp_file_set_string。同じ名前の値があると、前の値を捨てて後の値を入れる
Windows 標準の「リモート デスクトップ接続」 未確認 Microsoft の資料に記載がない。こちらでも再現していない

FreeRDP には、もう 1 つ癖があります。drivestoredirect:s: のように値が空だと、FreeRDP は「指定なし」として読み飛ばします。Windows の「共有しない」とは扱いが違います。どちらにしても、1 つのファイルに逆の意味の行を 2 つ置かないのが確実です。

自分の .rdp を、接続せずに点検する

手元の .rdp は、ダブルクリックしないでください。開くと接続が始まります。次の 2 つの方法なら、接続せずに中身を見られます。

メモ帳で見る

  1. エクスプローラーで .rdp の右クリックメニューを開き、「プログラムから開く」でメモ帳を指定する
  2. メモ帳の検索(Ctrl + F)に drivestoredirect と入れ、「次を検索」を最後まで繰り返す。見つかった行が 2 つ以上ないか、コロンの後ろが空か * かを確かめる
  3. redirectclipboard・redirectprinters・authentication level も、同じやり方で値を確かめる

Windows がどう読んだかを見る

2 行あるときに Windows がどちらを使うかは、自分の PC で確かめられます。mstsc /edit は、接続せずに設定画面を開くコマンドです。

  1. Win + R を押し、mstsc /edit "ファイルの場所\ファイル名.rdp" と入れて Enter
  2. 「オプションの表示」→「ローカル リソース」→「詳細」を開く
  3. 一覧の「ドライブ」にチェックがあるかを見る。チェックがあれば、その PC は共有する設定として読んでいる
  4. 「接続」は押さずに、右上の × で閉じる

書き換えるなら

今後も RDP を使うなら、メモ帳で次のように書き換えて保存します。

  1. drivestoredirect の行をすべて消し、drivestoredirect:s:(値は空)を 1 行だけ書く。1 行だけ直すと、残ったもう 1 行が効くことがある
  2. redirectclipboard:i:0 にする。パスワードをコピーして貼る人は、特に
  3. redirectprinters:i:0 にする
  4. authentication level:i:2 にする。認証に失敗したら警告が出て、接続するかを選べる

書き換えたあとも、上の「Windows がどう読んだかを見る」で、「ドライブ」のチェックが外れていることを確かめてください。

Windows を最新にしておくことも効きます。Microsoft によると、2026 年 4 月のセキュリティ更新から、.rdp を開くと接続前に確認画面が出て、ファイルが求める共有(ドライブなど)は既定ですべてオフになりました。確認画面で「ドライブ」にチェックを入れなければ、共有されません。

サーバーを管理する側は、サーバーのポリシー fDisableCdm でドライブの共有そのものを止められます(②の記事でラボ実測)。

デスクトップクラウドにつないでいた人がやること

攻撃者とみられる者は 10 月 24 日付けの声明で、GMO が 27 日正午(日本時間)までに 100 万ドルを払わなければ、利用者の自宅の PC を暗号化し、持ち出したデータを公開すると書きました(攻撃者サイトの保存版で確認)。期限の前か後かで、やることは変わりません。予告どおりに動く保証も、期限を守る保証もないからです。期限が過ぎて何も起きていなくても、PC の中に何かが置かれていないとは言えません。

  1. パスワードを変える。FX の取引に使っていない端末(スマホなど)から、メール、FX 口座と MT4/MT5、ブラウザに保存していたものの順に変える。GMO も第 5 報で「FX取引に使用していない端末(スマートフォンや別のPC等)から」と案内しています
  2. ログイン中のセッションを切り、2 段階認証を入れる。パスワードを変えても、ログイン済みのセッションが残ることがある
  3. ウイルス対策ソフトでフルスキャンし、データをバックアップする。GMO が第 5 報・第 6 報で利用者に求めていることです。ただし、RDP の共有で読まれただけなら、スキャンで見つかる物は残りません
  4. PC のスタートアップとタスク スケジューラを見る。共有されたドライブには書き込みができる。Win + R → shell:startup で開くフォルダと、タスク スケジューラに、見覚えのない物がないかを確かめる
  5. GMO の調査に協力するかを決める(任意)。GMO は第 6 報で、不正な操作があった可能性のある利用者に、接続に使っていた PC を調査のために貸してほしいと呼びかけています。調べる範囲や返却の方法は、事前に確認書で示されます。協力するなら、初期化は PC が戻ってからにしてください。GMO がパスワードや認証コードを尋ねることはありません
  6. できれば、PC を初期化する。自分で作った文書や写真だけを USB メモリなどに逃がし、.exe・.bat・.lnk・圧縮ファイルは移さない。初期化は「すべて削除する」を選ぶ。これはこちらの推奨で、公式の案内ではありません
  7. 手元の .rdp は、接続に使わない。残しておくなら、上の手順で点検だけする
更新 2026-10-29上の 7 項目は、第 6 報までの案内にもとづくものです。その後、GMO の案内が 3 つ増えました。攻撃者が公開した情報と称するサイトにアクセスした人は、ウイルス対策ソフトなどでフルスキャンをする(第 11 報)。電源を落とした PC を再び使う前に、セキュリティスキャンとバックアップをする(第 14 報)。公開された情報に自分の情報が含まれていた人には、GMO から個別に連絡がある(第 12 報)。詳しくは続報にあります。

攻撃者を名乗る連絡が来たら

  • 開かない。リンクと添付を押さない
  • 返信しない。払わない
  • ファイルを送らない。攻撃者は利用者に「.rdp を保管して訴訟の証拠に」と呼びかけましたが、そうした呼びかけに応じてファイルを渡す必要はありません
  • メールや画面は消さずに残し、警察のサイバー事案の相談窓口に相談する。PC を調べてもらうなら、初期化の前に
  • 家族や職場に「自分の名前で変なメールが来ても開かないで」と伝えておく。攻撃者の声明には、払われなければ閲覧履歴などを、利用者のメールの連絡先にいる知人や家族、仕事の相手に送る、とありました

分からないこと

  • 攻撃者の画像が、GMO の配布したファイルそのものか。GMO の発表は触れていません
  • drivestoredirect が 2 行あるとき、Windows 標準の接続ソフトがどちらを使うか
  • VPS にどこから入られたか。攻撃者は自分のサイトで「VPS 群が Active Directory の 1 つの環境でつながっていて、ある VPS から別の VPS へ移れた」と主張しています。さらに、全 VPS に共通の管理者権限のアカウントがあり、サポート担当者が利用者の PC に接続したとき、利用者側がその認証情報を取り出せる状態だった、とも主張しています(10/24 の投稿)。どちらも攻撃者の主張で、GMO は触れておらず、こちらでも確認できていません。GMO は侵入経路を調査中とし、原因を公表していません(第 6 報まで)
更新 2026-10-29第 16 報(10/29 20:50 時点)でも、GMO は侵入経路と原因を公表していません。調査結果が公表される保証はなく、攻撃者の主張は確かめられないまま残るかもしれません(続報)。

まとめ

  1. .rdp はテキスト。drivestoredirect が空なら共有しない、* なら全ドライブを共有する
  2. 攻撃者の画像には、逆の意味の drivestoredirect が 2 行あった。FreeRDP は後の行を使う。Windows は未確認
  3. 点検はメモ帳か mstsc /edit で。ダブルクリックはしない
  4. 直すなら、drivestoredirect の行をすべて消して空の行を 1 つだけ書く
  5. 期限の前でも後でも、パスワードの変更と PC の点検をする

出典

  1. Microsoft Learn「Supported RDP properties」(`drivestoredirect` ほか)learn.microsoft.com/en-us/azure/virtual-desktop/rdp-properties
  2. Microsoft Learn「Understanding security warnings when opening RDP files」(2026 年 4 月の更新)learn.microsoft.com/en-us/windows-server/remote/remote-desktop-services/remotepc/understanding-security-warnings
  3. Microsoft Learn「mstsc」(`/edit`)learn.microsoft.com/en-us/windows-server/administration/windows-commands/mstsc
  4. FreeRDP 3.32.2 `client/common/file.c`github.com/FreeRDP/FreeRDP/blob/3.32.2/client/common/file.c
  5. GMO インターネットグループ 第 4 報group.gmo/info/alert/20261024/
  6. 同 第 5 報group.gmo/info/alert/2026102402/
  7. 同 第 6 報(2026-10-26 21:00 時点)group.gmo/info/alert/20261026/

確認日 2026-10-26